■第231回行事・アーカイヴス(2013年3月)

★亀の瀬地滑り地見学と亀瀬岩を望む

●大和川が大阪平野に抜けようとするところに「亀の瀬」があります。ここは「地すべり」発生地として有名で、ひとたび大規模な「地すべり」が発生すると大和平野からの唯一の「水」の「出口」が閉鎖されることになり、交通が寸断されるとともに、上流側では湛水、閉塞部の決壊では下流域が洪水の被害を受けます。地滑りの原因・歴史を調べ、地すべりにより造生した地形を観察しました。

コース:JR・河内堅上駅~亀の瀬[地すべり地]~亀瀬橋・[亀瀬岩眺望]~JR・河内堅上駅

【国土地理院発行1:25000地形図「大和高田」使用】
25000大和高田信貴山_亀の瀬説明入②

 

(図上の左クリックにより拡大)

 

◆「亀の瀬」地滑り地の地質
○本地域の主な地質である、第三紀層に生成した火山岩の二上層群(中新世中期:1500~1000万年前)は、花崗岩を基盤にして上部に堆積岩の大阪層群を載せ、積み重なってできた地層の表層をドロコロ溶岩*がおおっていることです。これは数百万年前に「亀の瀬」の北方にあったドロコロ火山が新旧2回噴出してできたと推定されています。
○二上層群の中のドロコロ溶岩などが熱水変質により粘土化して、滑り面となっています。粘土層は、水を通さないので粘土層の上部に水がたまり、そのために粘土層より上の土塊は下方に滑っていきます。滑り面は、地下20m~60mとされています。
亀の瀬地形断面図_国土交通省近畿地方整備局
【亀の瀬地形断面図:国土交通省近畿地方整備局大和川河川事務所】

◆「亀の瀬」の地形

○「亀の瀬」では太古の昔から地すべりがありました。地すべりで移動した土の中から発見された木片の年代測定では、約4万年前という結果が得られており、地すべりはそれ以前から発生していたとみられます。
○万葉集に出てくる「畏の坂」が「亀の瀬」あたりの道をさし、その由来が地すべりにあったと考えられています。「畏れる」は神を畏れる意味があり、昔の人には「亀の瀬」の地すべりが神の仕業と見えたのでしょう。
○「亀の瀬地すべり地」は、金剛山地と生駒山地を東西に横切って流れる大和川の峡谷部の丘陵地帯で、大和川右岸の柏原市峠にあります。地すべりが始まったのは数万年前からといわれていますが、記録が残されているのは明治以降しかありません。
地すべり断面地形_鈴木②

地すべり断面地形】  (図上の左クリックにより拡大)

◆「亀の瀬」の地滑り発生
○明治20年(1887)に大和川右岸に鉄道が開通しましたが、昭和6~7年頃に広範囲にわたって地盤が動き出し、国鉄関西本線(現JR大和路線)の亀の瀬トンネルが押しつぶされ、大和川の川底が盛り上がり川を塞いでしまいました。このために、鉄道の路線は大和川の右岸から左岸に移されました。昭和42年2月にも大きな地すべりがありました。
○明治36年7月、断続的に降り続く雨により、大和川上流部が何度も浸水していたところに地すべりが発生し、大和川の河床が隆起しました。さらに、梅雨の豪雨が重なり、大和川が堰上げられました。このときの被害は、記録によると浸水面積約45ha、堤防の決壊13ヵ所、田畑の水没約12ha、家屋の流出・崩壊など20戸。上流地・王寺駅南方の張井・三郷にかけての氾濫被害がとくに甚大で、地すべり地内を通る鉄道(関西本線)のトンネル東口も崩壊しました。
○昭和7年7月に発生した地すべりでは約30ha、甲子園球場の20倍もの広さの土がすべり落ちました。河床が9m以上隆起し、大和川は完全に閉塞し、上流はダム湖と化しました。現在の大和川の流れは、このときに左岸の明神山を削り取って新たに開削したものです。
○昭和42年2月、柏原市清水谷地区で亀裂が発見され、同市峠地区の旧地すべり地もこの影響を受けて活動し始めました。これは、総面積50haにおよぶ大規模な地すべりに発展しました。大和川を越えた対岸の国道25号は約1m隆起し、大和川も250mにわたって川幅が約1m狭まり、河床も隆起しました。しかし、大和川の閉塞にはいたらず、幸いなことに雨も少なく、上流部の浸水という最悪の事態は免れました。
田畑の亀裂陥没_地滑り結果1967年【地滑りによる田畑の亀裂・陥没(1967年):国土交通省近畿地方整備局大和川河川事務所】

◆「地すべり」対策事業
○これらの「地すべり」を防止しないと大和川が堰き止められて、水は逆流し、奈良盆地は大海原になってしまう危険性があります。それで昭和37年より、建設省(現国土交通省)が亀の瀬地滑り対策事業を始めました。地滑り対策工事は、地下水を地表にくみ出すトンネルを掘る排水工事、地すべりの本体である土塊をくり抜く排土工事など、地中深く鉄筋コンクリ-トの杭を打っています。

【参考文献】
○国土交通省近畿地方整備局大和川河川事務所:ホームページ。

【2013年3月16日実施・案内:鈴木美和子・編集:宮﨑信隆】

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